訪問介護の記録業務に、毎日1〜2時間かかっていませんか。私たちは自社で訪問介護を運営する中で、この記録作成をAIで内製化し、作成時間をおおよそ1/3にまで縮めました。本記事では、介護事業所の管理者やサービス提供責任者(サ責)の方へ、その具体的な手順と現場で培ったコツを、当事者の目線でお伝えします。
介護記録のAI効率化とは、訪問介護などの現場で毎日発生する記録業務の負担を、人工知能を用いて軽減する取り組みです。例えば、毎日1〜2時間かかっていた記録作業を、音声や箇条書きのメモからAIに下書きさせることで大幅に短縮できます。自社のルールを学習させれば、スタッフごとのばらつきが減り、一定の品質を保つことが可能です。ただし、AIが作成した文章は事実との相違がないか、最終的には必ず人が確認して修正する必要があります。
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介護記録のAI効率化はなぜ必要か|現場が直面する課題
「訪問が終わってからの記録に、毎日1〜2時間とられている」。訪問介護の現場で最も多く耳にする悩みのひとつです。ケアを終え、疲れた体で事務所に戻ってから、あるいは自宅で夜遅くまで記録と向き合う。私たちも、かつては同じ課題を抱えていました。
なぜこれほど介護記録に時間がかかるのか。主な原因は、提供したケア内容や利用者の状態変化を「文章として一から考える」作業にあります。同じような介助内容でも、利用者ごと・訪問のたびに表現を変えて書き直すため、1件あたり数分でも積み重なれば大きな負担です。さらに、加算の要件を満たしているか、老計10号に沿った記載になっているかの確認も、書く手を止める要因になります。
- 提供したケア内容を、毎回ゼロから文章化している
- 利用者の状態変化を、後から思い出して書いている
- 記録のばらつき(スタッフによって書き方が違う)を直すのに時間がかかる
- 加算要件や老計10号に沿った記載かどうかを常に気にしている
- サ責の確認業務が膨大になっている
記録業務の重さはスタッフの疲弊に直結し、本来のケアに集中する時間を奪うだけでなく、離職の原因にもなりかねません。だからこそ私たちは、介護記録のAIによる効率化に取り組みました。

介護記録の作成時間を1/3にした3つのステップ
AIが得意なのは「文章をゼロから考える」という、最も時間のかかる部分の肩代わりです。私たちが現場で実践している流れを、3つのステップでご紹介します。
ステップ1:音声・箇条書きでメモを残す
訪問直後や次の訪問への移動中など、記憶が鮮明なうちに、スマートフォンで簡単なメモを残します。重要なのは「文章にしなくていい」ということです。キーワードや箇条書き、音声入力で、必要な情報だけを素早く残します。
- メモの例:「体温36.5、脈拍70。食事8割。入浴介助。右膝の痛み訴えあり、湿布貼付介助。本日は落ち着いている」
- ポイント:この段階で体裁を整える必要はありません。事実を正確に、簡潔に残すことだけを意識します
これにより、後から記憶をたどって文章を組み立てる手間がなくなり、記録の抜け漏れも防げます。
ステップ2:AIに下書きさせる
ステップ1のメモをAIに渡すと、事前に設定したフォーマットや自社ルールに沿って、正式な介護記録の文章に整えてくれます。老計10号に求められる記載事項(サービス内容、利用者の状態、特記事項など)も、指示のしかた次第で盛り込めます。
- AIの役割:メモから自然な文章を作成、言い回しの統一、加算要件に配慮した表現の調整
- 自社ルールの反映:よく使う言い回し・避けたい表現などの細かな指示も、あらかじめ覚えさせておけます
当社には看護師も在籍しており、医療的な視点からの記録支援にもAIを活用しています。スタッフごとの記録のばらつきが減り、一定の品質の下書きが安定して出てくるようになります。
ステップ3:人が確認・修正する
AIの下書きは、必ず担当者が最終確認します。AIはあくまで下書きの補助であり、最終判断は人が行うことが不可欠です。事実との相違がないか、利用者の個性やニュアンスが適切かをチェックし、必要に応じて直します。(2026-09-07 時点の情報。制度・統計の出典:厚生労働省「介護分野における生産性向上ポータルサイト」)
- 確認のポイント:バイタルの数値、服薬状況、利用者の具体的な訴え、介助内容と時間
- 効果:ゼロから書くより圧倒的に速く、抜け漏れも大幅に減ります
この「人が最後に確認する」プロセスこそが、記録の正確性と信頼性を守るうえで最も重要だと考えています。

AI導入で変わる、記録の「質」と「現場」
介護記録のAI活用は、時短だけでなく、現場全体の質と働き方も変えていきます。私たちが実感している変化です。
- 記録の標準化:スタッフごとのばらつきが減り、誰が読んでも分かる記録が安定して残る
- サ責の負担軽減:確認・修正の手間が減り、本来のマネジメント業務に時間を割ける
- 情報共有の促進:質の高い記録が早く共有され、チームケアの連携がスムーズになる
- 説明責任の強化:分かりやすい記録は、ご家族への説明や信頼関係づくりにも役立つ
- ケアに集中できる時間の増加:記録の負担が減った分、利用者と向き合う時間が増える

AI下書き300件を検証して分かった「消えない誤り」と直し方(当社の実測)
注記:下の「0件」は「空欄を埋めても消えない注意(タイプA)」の集計です。是正後もラベルの中の空欄 1 件・評価語なし 1 件は残っており、誤りがゼロになったという意味ではありません。
当社は自社の看護記録AI(SOAP形式の下書き)で、30カテゴリ×10変種=300パターンの下書きを機械検査にかけました(検証日 2026-08-20・集計 2026-09-17)。本検証の対象は当社の看護記録AI(SOAP 形式)です。介護記録での適用結果は未検証ですが、下書きの型の考え方は共通なので参考として載せます。
| 項目 | 是正前(本番の下書き) | 是正後(型を直した下書き) |
|---|---|---|
| 検証した下書き | 300件 | 同じ300件 |
| 貼り付け前に注意が出た件数 | 214件 | 263件(うち259件は「空欄を埋めてください」=意図した注意) |
| 空欄を埋めても消えない注意(構造の誤り) | 181件(60%)すべて「訪問時刻がない」 | 0件 |
| 監査で引っかかった型 | 報告文型の穴埋め残り26・ラベルの中の空欄6・S/O/A/Pの欠け各5・定型行の混入5 | ラベルの中の空欄1・評価語なし1 |
誤りの正体は、AIの「文章力」ではなく下書きの型でした。時刻を書く場所が型に無かったので、人がいくら埋めても注意が消えない。直し方は3つです。
- 必ず要る項目は、空欄の形で下書きに固定する(例:「訪問時刻【 】〜【 】」)。AIに「書かせる」のではなく「枠を出させる」
- あり得ない値は自由文にさせず、判定の形に固定する(例:「【判定】要確認」)。数値やラベルは文の外に出す
- 直したら同じ300件で測り直す。「埋めても消えない注意」が0件になるまでを合格線にする(今回は181→0)
一方で、まだ測れていないものもあります。修正にかかる時間(人が1件を直す秒数)と音声入力の誤認識率は未計測です。計測でき次第、この記事に追記します。

失敗しないための3つのコツと注意点
1. 自社の「記録の型」をAIに覚えさせる
自社が求める記録の「型」を明確にし、AIに覚えさせることが成功の鍵です。よく使う言い回し、避けたい表現、加算で必要な観点、老計10号準拠の必須項目、文体。これらを一度設定すれば、出力のばらつきが一気に減り、自社らしい記録が安定して生成されます。
2. 事実は必ず人が確認する
AIは「それらしい文章」を作るのが得意な反面、事実でない内容を補ってしまうことがあります。バイタルや服薬状況などの数値、利用者の具体的な訴え、介助内容は、必ず人が目を通して確認する運用を徹底してください。介護記録は利用者の尊厳を守る大切な記録でもあります。最終責任は人が持つ、という意識が不可欠です。
3. スモールスタートで段階的に導入する
いきなり全部をAI化しようとすると現場が混乱します。まずは訪問介護のサービス提供記録など特定の記録から試験導入し、少人数のチームで効果を確かめてから広げるのが定着の近道です。丁寧な説明と、導入後のフォローも欠かせません。
また、利用者の個人情報を扱うため、AIツールの選定では情報セキュリティと個人情報保護への対応を必ず確認してください。

記録が整うと、次に軽くなるのは申し送りです。「申し送りが毎回長引く理由と二重入力の止め方」もあわせてどうぞ。
よくある質問
AI導入には高額な費用がかかりますか?
ツールの種類や規模によりますが、月額数千円から使えるサービスも増えており、以前より導入のハードルは下がっています。初期投資を抑え、スモールスタートで効果を確かめながら進めるのがおすすめです。当社では、状況に合わせた導入のご提案も行っています。
AIが作成した記録は、記録として問題ありませんか?
介護記録にはサービス提供の事実を明確に記載する義務があります。AIが作った下書きでも、最終的に担当者が内容を確認し、事実と相違ないことを確かめて完成させれば、記録の役割は果たせると考えられます。AIはあくまで作成補助で、最終責任はサービス提供者にあります。
スタッフのITリテラシーが心配です。使いこなせますか?
現在のAIツールは直感的に操作できるものが多く、特別なITスキルは必要ないことがほとんどです。シンプルな操作画面のツールを選び、まずは一部のスタッフから始めて慣れてから全体に広げれば、現場の混乱は最小限に抑えられます。導入時の研修や運用フォローも合わせて設計するのがおすすめです。
音声入力にも対応できますか?
対応できます。移動中や手が離せない場面では音声からの下書き作成が有効です。ただし記録の確定は必ず人が内容を確認してから行う運用にしてください。
- 記録が重いのは「文章をゼロから考える」から。そこをAIが肩代わりする
- メモ→AI下書き→人が確認、の3ステップで作成時間は大きく縮む
- 自社の型を覚えさせ、事実は人が確認し、小さく始めるのが成功のコツ
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