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経営 × AI

書類待ちで仕事を止めない|介護事務の「待ちフォルダ」の使い方

書類を2つのトレイに分けて整理する介護事業所の事務スタッフ(AIで生成したイメージ)待つ書類と、進める仕事を分ける。
この記事は、吉村 貴成(代表取締役)ほか現場スタッフの知見をもとに作成しています。介護・医療の現場を運営する当事者の視点を反映しています。

待ちフォルダとは、診療情報提供書や訪問看護指示書などの書類が点検用の台帳にまだ入っておらず、記録の点検を進められない記録だけを、ふだんの受信トレイから外して預けておく場所のことです。当社は関連会社の訪問看護の記録点検で、2026年8月からこの形を使っています。書類が届いたら、その人の記録を受信トレイへ戻すだけで、止まっていた点検がそのまま再開します。

訪問看護の事務では、毎月どこかで「この人の指示書の写しが点検の台帳にまだ入っていない」「新しい利用者の情報がそろっていない」という状態が起きます。書類を待つこと自体は避けられません。問題は、待っている間に仕事がどう扱われるかです。

書類が足りない記録を受信トレイに置くと何が起きるか

当社の記録点検は、点検する記録を受信トレイに置き、そこから順番に処理する流れです。ところが、利用者の書類がそろっていない記録を受信トレイに置いたままにすると、次に点検を回すたびに同じ記録が資料不足のまま何度も点検されます。

点検の結果は、看護師が見る共有ボードに指摘カードとして貼られます。資料不足が原因の指摘が回るたびに貼られると、同じ内容の指摘が二重・三重に並び、あとから消せないという状態になりました。看護師から見れば、身に覚えのない指摘が増えていくことになります。記録を3つの立場で点検する流れは訪問看護記録の自己点検をAIで行う3視点チェックにあります。

机の上に並んだ2つの書類トレイと付せんのついたファイル(AIで生成したイメージ)
処理を待つものと、書類を待つものを同じ場所に置かない(写真はAIで生成したイメージ)

待ちフォルダの決まりは「受信トレイは未処理専用」

そこで決めたのは、受信トレイには「いま処理できるもの」しか置かないという1つの決まりです。書類が足りない記録は、点検に回す前に待ちフォルダへよけます。

大事なのは、よける前にできる所まで済ませておくことです。当社の場合、記録が訪問の終了前に確定していないかを見る「時間の突き合わせ」は書類がなくてもできるため、8月分ではよけた16名分も全員済ませてから預けました。待ちフォルダに入っているのは「記録の中身の点検」だけで、時間の確認は終わっている、という状態です。

この分け方は、紙の書類でも同じです。机の上の未処理の箱に「返事待ち」の書類が混ざると、毎朝その書類を手に取って、また戻すことになります。仕組みの考え方は介護の申し送りと記録の二重入力とも共通しています。

介護施設で働くスタッフ
介護施設で働くスタッフ

足りない書類を2つに分けると、頼む先が決まる

待ちフォルダに入れるとき、何が足りないのかを2つに分けて書き出しています。分けておくと、事務員がどこに何を頼めばよいかがすぐ決まります。

状態必要な書類8月分の人数
利用者の登録そのものがない(新しく始まった方)診療情報提供書・訪問看護指示書・訪問看護計画書の一式10名
登録はあるが、診療情報提供書が台帳にない診療情報提供書6名

1つ目は、事業所では書類を受け取ってサービスを始めているものの、点検用の台帳への取り込みが追いついていない場合です。2つ目は、登録は済んでいても、点検で参照する書類の写しだけが台帳に欠けている場合です。指示書を受け取る前にサービスを始めてよい、という意味ではありません。前者は書類一式を、後者は1種類を頼めば済みます。生活保護の方の医療券・介護券のように、届いたかどうかを追いかける書類の管理は医療券・介護券の管理をデジタル化する方法でも扱っています。

封筒と確認表を手に電話で書類を依頼する事務スタッフ(AIで生成したイメージ)
足りない書類と頼む先を先に分けておくと、確認や依頼の重なりが減る(写真はAIで生成したイメージ)

事務の手順は3つだけにした

足りない書類の取り寄せから点検の再開までの手順は、事務員が迷わないように3つに整理しました。

①書類をもらってくる

待ちフォルダの一覧に、誰に何が要るかが書いてあります。診療情報提供書や指示書は医療機関から事業所に届いている写しを、訪問看護計画書は事業所が作って利用者の同意を得たものを、事業所の担当者からもらいます。

②届いた書類を利用者の台帳に入れて更新する

届いた書類は利用者の書類を入れる場所に置き、台帳の更新を1回かけます。これで点検が参照する情報がそろいます。

③その人の記録だけを受信トレイへ戻す

待ちフォルダから、書類がそろった人の記録だけを受信トレイに戻し、点検を回します。ファイル名は変えません。名前を変えると、誰の記録か分からなくなるためです。

当社では、月末の忙しい時期に抜けが出ないよう、必要な確認を残したうえで手順を3段階にまとめました。手順を整理することも、仕組みの一部です。社内で作った仕組みを現場に出す前に何を確かめるかは社内システムを現場に出す前の検証項目にまとめています。

テーブルに資料を広げて意見を出し合う看護部長と看護師たち
テーブルに資料を広げて意見を出し合う看護部長と看護師たち(AIで生成したイメージです)

似た名前を同じ人と決めつけない

書類待ちの記録を扱っていて、もう1つ決めたことがあります。名前が似ているから同じ人、という扱いをしないことです。

記録のファイルと時間の記録で、名前の漢字が違うことがあります。たとえば「礒」と「磯」のような異体字です。当社では、利用者の番号などで同じ方だと確かめた組み合わせだけを異体字の対応表に登録し、その組み合わせだけを同じ人として扱っています。一方で、伏せていない文字が「美」と「三」のように別の漢字なら、似ていても同じ人とはしません。記録システムで正しい氏名と、同じ名字の別の方がいないかを確かめてから戻します。過去に、よく似た2つの名字を同じ人として処理しかけたことがあり、それ以来の決まりです。個人情報を扱うときの考え方は介護・医療の現場でAIを使うときの個人情報の扱いに書いています。

2枚の書類を並べて指で同じ箇所を見比べる手元と虫めがね(AIで生成したイメージ)
似ている、は同じ、ではない。違う漢字なら確かめてから戻す(写真はAIで生成したイメージ)

書類が届く前に進めてよい作業・止める作業

書類待ちの間に何でも止めてしまうと、月末に仕事が集中します。当社では次のように分けています。

進めてよい作業書類が届くまで止める作業
訪問の開始・終了時刻と記録の確定時刻の突き合わせ記録の中身の点検(書類の内容と照らす部分)
誰に何の書類が要るかの一覧づくりと依頼書類との照合が要る指摘カードの作成
ファイル名を変えずに待ちフォルダへ移すこと名前の漢字が違う記録を同じ人として扱うこと

時刻のずれのように書類がなくても分かった点は、待たずに主任へ共有します。止める作業に共通しているのは、あとから取り消しにくいものだという点です。指摘カードは看護師の目に触れますし、人の取り違えは記録そのものを傷つけます。運営指導の前に書類の進み具合を見える化する考え方は運営指導の準備をAIで効率化するで扱っています。

チェックリストと書類を突き合わせる作業風景
チェックリストと書類を突き合わせる作業風景

自社で始めるときの順番

専用の仕組みがなくても、次の順番なら今日から始められます。

①未処理の場所と待ちの場所を分ける:フォルダでも机の箱でも構いません。②待ちの一覧に「誰に・何が・どこへ頼むか」を書く:人数より、足りない書類の種類で分けるのがこつです。③戻す手順を3つ以内にする。戻すときにファイル名を変えない決まりも一緒に。AIや自動化をどの業務から入れるかは介護事業所のAI導入はどの業務から始めるかを参考にしてください。

施設内の機能訓練スペース
施設内の機能訓練スペース

よくある質問

待ちフォルダと受信トレイを分けないと、どんな困りごとが起きますか?

当社では、資料が足りない記録が点検のたびに処理され、同じ内容の指摘が看護師の共有ボードに何度も貼られました。貼られた指摘はあとから消しにくく、看護師にとっては身に覚えのない指摘が増える形になります。分けてからは、この重なりが起きていません。

どんな書類が届かないことが多いですか?

当社の8月分では、新しく始まった利用者の書類一式(診療情報提供書・訪問看護指示書・訪問看護計画書)と、登録済みの方の診療情報提供書の2種類でした。どちらなのかを先に分けておくと、頼む先と頼む書類がすぐ決まります。

書類を待っている間、点検は全部止めるのですか?

全部は止めません。訪問の時刻と記録の確定時刻の突き合わせのように、書類がなくてもできる作業は先に済ませます。止めるのは、書類の内容と照らす点検と、書類との照合が要る指摘カードの作成のように、あとから取り消しにくい作業だけです。書類がなくても分かった時刻のずれなどは、待たずに共有します。

名前の漢字が少し違う記録はどう扱いますか?

利用者の番号などで同じ方だと確かめて異体字の対応表に登録した組み合わせだけを、同じ人として扱います。伏せていない文字が別の漢字なら、似ていても同じ人とは決めず、記録システムで正しい氏名と同じ名字の別の方がいないかを確かめてから戻します。

紙で管理している事業所でも使えますか?

使えます。机の上に「処理する箱」と「書類待ちの箱」を分け、書類待ちの箱に誰に何が要るかのメモを付けるだけでも、同じ書類を毎朝手に取る手間は減ります。戻す手順を3つ以内に決めておくのも、紙の運用で同じように効きます。(2026-10-10 時点の情報。人数は当社の記録点検・2026年8月分より。出典:厚生労働省「介護分野における生産性向上ポータルサイト」)

この記事のまとめ
  • 書類が足りない記録を受信トレイに置いたままにすると、点検のたびに処理されて同じ指摘が重なる。受信トレイは「いま処理できるもの」専用にする。
  • 待ちフォルダには「誰に・何が・どこへ頼むか」を、足りない書類の種類(新規の一式か、提供書だけか)で分けて書き、書類が届いたら3つの手順で戻す。
  • 時刻の突き合わせのように書類がなくてもできる作業は先に進め、書類との照合が要る指摘カードの作成や名前の違う記録の同一扱いのように、取り消しにくい作業だけを止める。

書類待ちで止まる事務を見直したい方へ

関連会社の訪問看護・介護施設の現場とともに、記録と書類の運用を仕組みにしてきた立場でご相談に乗ります。

この記事の仕組みを、御社でも。

私たちは関連会社の介護・医療の現場とともに、AIで業務を内製してきた会社です。記録と書類の運用を作り直してきた経験から、御社の事務の流れに合う形をご一緒に考えます。

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